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なぜ、海外産はちみつは濃いのか?

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日本独特の転地養蜂による影響

なぜ、海外産はちみつは、国産はちみつと比べて味が濃いと感じるのでしょう?
日本人は昔からレンゲやアカシアのようにクセのない甘味を好み、そのようなはちみつを食べ
慣れているため、海外産を食べたときに「なんか濃いな !?」と感じるのでしょうか?
しかし、同じアカシアのはちみつを比べても、海外産の方が濃い甘味なのです。
一体なぜ、そのような違いがあるのでしょう?

転地養蜂の習慣が影響

この違いには、昔からの日本と海外の養蜂のやり方の違いが大きく関係しています。
その違いとは、転地養蜂と定地養蜂による違いです。
まず、転地養蜂とは、日本のように南北に伸びている国土では、春になると南から順に温かくな
り花が咲いていくので、それを追いかけるように南から北へと移動しながら行う養蜂です。
例えばレンゲならば、4月初旬は鹿児島で開花、続いて4月中旬に岐阜で開花、そして4月下旬に
福島で開花・・と追いかけて行けば、常に豊富な蜜源での採蜜活動ができ、レンゲのはちみつを
量産できるというわけです。
この転地養蜂の発祥は古代エジプトといわれており、イカダに巣箱を乗せてナイル川を南から北
へ移動しながら花の開花を追いかけたというのがはじまりですが、現代では転地養蜂をしている
のは主に日本だけのようです。

一方、定地養蜂とは、ミツバチの巣箱を動かすことなく一カ所で行う養蜂のやり方で、海外では
こちらがスタンダードです。
しかし、なぜ転地か定地の違いによって、はちみつの濃度に違いが出るのでしょう?

転地養蜂で怖いのは分蜂熱

転地養蜂は、常に豊富な蜜源を追いかけて採蜜できるという利点がありますが、一番の問題点が
ミツバチに分蜂熱を起こされることです。
分蜂というのは、巣箱の中に蜜を貯めるスペースがなくなると、新天地を求めて女王蜂と巣の
仲間の半分が引っ越しをすることで、この前触れになる雰囲気を分蜂熱といいます。

分蜂熱について詳しくはコチラ→ 蜂群の健勢と油断できない分蜂熱

分蜂熱を起こしたミツバチは、仕事をしなくなります。
巣内に仕事をするスペースが無くなったので分蜂熱を起こしたのであり、仕事をしなくなると
いうのは頷けますが、これでははちみつが採れません。苦労して移動してきた意味がなくなって
しまうというものです。

この分蜂熱を抑える一つの方法は、空の巣脾を与えて常にミツバチに仕事をさせることですが、
転地養蜂は、トラックにたくさんの巣箱を乗せて移動しますので、費用面を考えるとあまり余分
な巣脾や継箱を乗せるわけにはいかなくなるのです。
それで、巣脾に蜜が貯まり、ミツブタも巣脾の上から1/3かかったくらいではちみつを回収し、
空になった巣脾を巣箱に戻すことで分蜂熱を防いでいるのです。
つまり、転地養蜂のはちみつは完全に熟しておらず、水分含有量が多いため味が薄く感じられる
のです。

定地養蜂で完熟はちみつを生産

一方、定地養蜂は場所を移さず一カ所で行うため、巣脾や継箱を持って行けば、分蜂熱を抑えな
がら完熟したはちみつを作ることができるのです。
例えば、ニュージーランドでは、役所に許可を受けた建屋内ではちみつの回収をしなければなら
ないという決まりがあるため、ちょこちょこ回収していると煩雑になってしまます。
そこで、蜜源の種類別にワンシーズン分をいっぺんに回収するため、すべての巣脾で100%ミツ
ブタがされた完熟はちみつを回収することができるのです。
日本では考えられませんが、ニュージーランドの養蜂場で、六段重ねの継箱で採蜜している風景
が見られるのもそんな理由からです。

また、完熟して水分含有量が適切なはちみつでないと発酵する恐れがあり、輸送中に内圧が高ま
るとドラム缶から吹き出てしまうため、必ず完熟したはちみつでないといけないのです。
それで、海外産の輸入はちみつは、国産に比べて濃く感じるわけです。

今では、輸送コストや転飼養蜂の技術面での煩雑さ、ローヤルゼリーなどはちみつ以外の製品を
作る養蜂家が増えたことから、日本でも定地養蜂が多くなりました。
しかし、長い転地養蜂の歴史のなかで培われた採蜜技術がスタンダードになったため、定地養蜂
でも早期にはちみつを回収するという習慣が残り、海外産に比べて味が薄く感じられるはちみつ
になってしまったというわけです。